第6回受賞者

*先生のご所属は、ご応募当時となります。

氏名・所属/研究題名/研究概要 助成金額
酒井 貴史(大分大学 助教) 500万円
アトピー性皮膚炎患者に生じる炎症と骨異常の予防戦略開発:RANKLを標的として
近年、アトピー性皮膚炎(AD)患者における骨折リスクが判明し、特に重症AD患者でそのリスクがより高まる。高齢者の骨折は生命予後に直結するため、対応が求められるが、AD患者における骨折の機序は分かっていない。申請者は以前、炎症と骨恒常性に関するreceptor activator of nuclear factor kappa-B ligand(RANKL)に着目し、AD患者における血清RANKL濃度とAD重症度との間に正の相関があることを見いだした。さらに骨折歴があるAD患者では、血清RANKL濃度が高値であった。同所見はADの炎症、骨異常にRANKLが関与している可能性を示唆する。本研究では「RANKLはADの増悪因子か?」、「RANKL阻害はADの炎症、骨異常を改善するか?」、「血清RANKL濃度はADにおける骨異常を予測できるか?」という仮説を検証することで、新しい予防、治療戦略を構築する。
宮垣 朝光(聖マリアンナ医科大学 准教授) 500万円
皮膚T細胞リンパ腫の新規治療標的となる表面分子の探索
がん細胞は、自身が発現している表面分子を介して、がん細胞自身、腫瘍周囲のストローマ細胞、免疫担当細胞に働きかけ、増殖・転移促進、免疫細胞の機能抑制を誘導し、治療抵抗性となっていることが知られており、免疫チェックポイント阻害薬などの表面分子をターゲットとした治療の開発がさまざまな癌腫で進められている。皮膚T細胞リンパ腫は、初診の時点で皮膚以外の臓器に病変を認めない皮膚原発の悪性リンパ腫だが、同様の機構が存在することが幾つかの研究から分かっている。一方で、皮膚T細胞リンパ腫における免疫チェックポイント分子、共刺激分子を含めた表面分子の解析は十分ではなく、表面分子をターゲットとした治療の臨床応用も少数に限られており、効果も十分とは言えない。本研究では、皮膚T細胞リンパ腫の腫瘍細胞に発現している新たな表面分子を同定し、その機能解析を行い、新たな治療ターゲットを提案することを目的としている。
岩田 浩明(北海道大学病院 講師) 250万円
ヘイリーヘイリー病の病態解明とハプロ不全に着目した新規治療開発
ヘイリーヘイリー病(HHD)は、青年以降に発症し腋窩、鼠径部などの屈曲部にびらんを生じる常染色体優性遺伝を示す遺伝性皮膚疾患である。責任遺伝子ATP2C1は、細胞内のゴルジ体膜上に存在するカルシウムポンプをコードする。ハプロ不全のためタンパク不足による機能低下の結果、細胞内カルシウム濃度の調整機構の破綻が生じる。細胞内カルシウム濃度の異常上昇と疾患発症の関係はいまだ解明されておらず、有効な治療法もない。本研究では、遺伝子改変技術によりATP2C1変異細胞を樹立して網羅的遺伝子解析を行うことにより病態解明を試みる。またHHDの特徴である「ハプロ不全」と「皮膚疾患」という二点に着目し、「局所mRNA治療」という画期的な治療法の開発を目指し、新たな治療選択肢による患者QOLの改善を目標とする。
肥田 時征(札幌医科大学 講師) 250万円
カスタムシーケンスパネルとリキッドバイオプシーによる日本人メラノーマの個別化医療
メラノーマは予後の悪い悪性腫瘍であり治療法の開発が喫緊の課題である。日本人のメラノーマは末端型や粘膜型が多く、欧米の症例と臨床像が異なる。そのため日本人に特有の遺伝子異常の詳細情報が必要だが、日本ではこれまでに主要3遺伝子の変異頻度しか知られておらず、症例の約半数のドライバー変異が不明である。そこで我々はメラノーマで重要な95種類の遺伝子を低コストでシーケンスできるパネルを開発した。これまでに31例のシーケンスを実施し、今後は多施設共同研究で100例のデータを得る予定である。本研究の目的は、このパネルシーケンスにRNAシーケンス、全ゲノムシーケンスを組み合わせ、日本人メラノーマのゲノム異常の全貌を明らかにし、治療可能な患者を増やすことである。さらに、患者毎に個別化されたリキッドバイオプシーで血液循環腫瘍細胞をモニタリングすることで診断から治療までをゲノム情報に基づいて行う体制を構築したい。
三上 万理子(医療法人けいしん会理事長) 250万円
USA300 clone皮膚感染症の迅速診断システムの開発
近年、USA300 cloneと呼ばれる強毒型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による皮膚感染症の報告が増加している。当初、USA300 cloneの流行は市中の皮膚科外来患者で顕在化したが、最近では病院にも拡大していることが分かってきた。この要因として、市中の医療機関で治療できずに重症化した患者が、病院に入院するケースが増加していることが挙げられる。USA300 cloneの蔓延を阻止するためには、本菌による皮膚感染症を迅速に診断し、適切な治療や感染対策を早期に実施する必要がある。そこで本研究では、USA300 cloneに特異的な単一のバイオマーカーを解明し、検体の前処理から結果の判定まで1台で実施できるマイクロ流路PCRデバイスを開発する。さらに、本検査法の実用化を目指して、実臨床での実証実験を行う。
山上 淳(東京女子医科大学 准教授) 250万円
単一細胞解析と連動した天疱瘡の自己抗体産生機序の解明
本研究の目的は、天疱瘡の原因として重要な役割を果たすと考えられるデスモグレイン(Dsg)特異的B細胞について、患者から分離された単一細胞解析の結果をもとに、対応する臨床情報を統合して自己抗体産生機序を解明することである。これまでの単一細胞RNAシーケンス解析から、天疱瘡患者のDsg特異的B細胞では、B細胞の分化・活性化・増殖に関与する遺伝子の発現上昇が見られ、治療によって症状が安定した後は発現が低下することが観察された。この結果に基づいて、本研究では1)該当する因子について、血清・末梢血リンパ球・皮膚組織などの患者検体を用いて自己抗体産生機序との関連について検討する、2)難治例や再発例に着目して、治療への反応性を決定する因子の同定を試みる、といった計画を立てている。より正確な病勢評価および新たな治療標的の対象として、Dsg特異的B細胞を検討する方法およびその臨床的意義の確立をめざす。
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