第5回受賞者

*先生のご所属は、ご応募当時となります。

氏名・所属/研究題名/研究概要 助成金額
新熊 悟(奈良県立医科大学 准教授) 500万円
復帰変異モザイクモデルマウスの作製と表皮細胞の増殖優位性獲得機序の解明
遺伝子治療は遺伝性皮膚疾患の根治的治療の有望な選択肢である。しかし、遺伝子治療した細胞の全身移植は、安全面やコスト面から実現困難である。もし遺伝子治療した細胞に周囲に対する増殖優位性を獲得させることで、治療細胞が生体内で自律的に増殖し広範囲に拡大することができれば、最小限の移植で効果を広範囲に波及することが可能になる。近年、様々な遺伝性皮膚疾患で後天的に一部の皮膚の遺伝子が正常化する復帰変異モザイクが生じることが明らかになり、我々はこの現象を応用した再生医療を開発した。興味深いことに、表皮水疱症の復帰変異モザイクの面積は他の疾患に比し極めて大きく、表皮水疱症の復帰変異モザイクは増殖優位性を獲得していることが示唆される。そこで、本研究では、復帰変異モザイクを有する表皮水疱症モデルマウスを世界で初めて作製し、表皮細胞の増殖優位性の獲得における上皮-間葉転換の役割を明らかにする。
清水 晶(群馬大学附属病院 講師) 250万円
皮膚悪性腫瘍関連Human papillomavirus検出キットの開発
ヒト乳頭腫ウイルス(Human papillomavirus,HPV)は子宮頸癌を始めとして中咽頭癌、外陰癌、肛門癌の原因でもある。皮膚科領域でも爪部有棘細胞癌、外陰癌、疣贅、コンジローマなどHPVで生じる疾患は多く、HPVタイピングは診断に有用である。申請者は400以上のHPVタイピングに従事してきたが、PCRによるHPVタイピングは組織からのDNA抽出などステップが多く、実施可能な施設は限られていた。本研究では、イムノクロマト法を用いた皮膚悪性腫瘍におけるHPV感染を同定する簡便な検出キットの開発を行う。本研究ではキットに用いる粘膜悪性型HPVに対する抗体作成、キットの試作、実際の皮膚腫瘍を用いた臨床試験を予定している。特に爪部HPV陽性皮膚腫瘍などが性行為を通じてHPV関連内臓癌の原因となる可能性もあり、簡便なキットの開発はHPV関連癌の早期発見と粘膜悪性型HPV感染拡大予防に役立つ。
大日 輝記(香川大学 教授) 250万円
円形脱毛症の上皮‐免疫微小環境(EIME)
円形脱毛症は毛包を標的とする自己免疫性疾患と考えられており、患者の人生の質を著しく損なう。ステロイドの局所注射や局所免疫療法が適用されているが大きな進歩がない。JAK阻害薬が効果を上げることが知られるものの安全性に課題が残る。患部の毛包上皮では、クラスⅠ分子や各種のNKG2Dリガンドの発現が促進し「免疫寛容」が破たんしていること、毛球部にCD8NKG2Dリンパ球が浸潤していることが報告されている。しかしながら、なぜ、どのような細胞内シグナルを介して毛包上皮のクラスⅠ分子や各種のNKG2Dリガンドの発現が促進して免疫寛容の破たんにいたるのか、CD8NKG2Dリンパ球はなぜ毛球部に遊走し、免疫寛容の破たんの「ループ」が伝播し「円形の」脱毛となるのかは十分明らかにされていない。本研究課題では、主に多重免疫染色の手法を用いて、円形脱毛症の上皮-免疫微小環境(EIME)を明らかにすることで新たな治療標的を提案する。
千貫 祐子(島根大学 准教授) 250万円
成人小麦アレルギー疾患感受性遺伝子に関する簡易検査法の開発と発症予防法の確立
これまでに申請者らは、成人小麦アレルギー患者の血清を用いて小麦アレルゲンの解析を行い、主要なアレルゲンがω-5グリアジンであることを明らかにした。今回、77人の成人小麦アレルギー患者について、全ゲノムの約66万箇所のSNPの情報を取得して、日本人コントロールデータと比較した。その結果、HLA領域に有意なSNPがみられたため、HLA8遺伝子を精査し、HLA-〇〇〇〇*〇〇:〇〇を関連候補マーカーとして同定し、次世代シークエンサーを用いてこのマーカーが正しいことを確認した(論文作成中)。今回、申請者らは、この結果に基づきLAMP法による簡便な疾患感受性遺伝子検出法の開発を行い、これまでに申請者らが開発したω-5グリアジン欠失1BS-18小麦系統を用いて小麦アレルギー発症予防法の確立を行う。
中村 元樹(名古屋市立大学大学院 講師) 250万円
メルケル細胞癌における腫瘍のG6PD発現と免疫活性に基づいた免疫チェックポイント阻害薬効果予測
我々は多施設より集積したメルケル細胞癌標本の次世代シーケンサー解析により、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)が腫瘍の免疫状態を表すマーカーとして有用であることを発見した。本研究課題では、G6PDによる腫瘍の免疫活性の評価が、免疫チェックポイント阻害薬治療の効果予測マーカーとして有用であるかを、実際に免疫チェックポイント限害薬で治療を行っているメルケル細胞癌患者の病理検体、血液検体を集積し、解析を行う。また他の免疫学的な因子についても、レスポンダーとノンレスポンダーの組織から抽出したRNAによるシーケンスにより、新たなバイオマーカーの発見を目指す。免疫チェックポイント阻害薬の適応は拡大しており、本研究で発見されるバイオマーカーは、メルケル細胞癌に限らず、悪性黒色腫をはじめとした広く多様な癌腫の治療効果予測に応用することができるだろう。
本田 哲也(浜松医科大学 教授) 250万円
組織常在型記憶T細胞の包括的機能理解を切り口とした慢性炎症性皮膚疾患病態解明と革新的治療戦略
組織常在型記憶T細胞(レジデントメモリーT細胞:TRM)は、組織に長期間生存・常駐するメモリーT細胞の一種である。近年、その過剰な活性化が種々の炎症性疾患の慢性化・再発に大きく関与している可能性が示唆されている。皮膚においても、TRMはアトピー性皮膚炎、乾癬などをはじめとする様々な慢性炎症性皮膚疾患にて病態形成への関与が疑われている。しかし、その活性調節・生存維持機構にはいまだ不明な点が多い。本研究では、独自に開発したヒト皮膚TRMの抽出法をもとに、各種ヒト慢性炎症性皮膚疾患における皮膚TRMのトランスクリプトーム解析、メタボローム解析等を行い、炎症性皮膚疾患における皮膚TRMのプロファイリング、TRMの活性化・生存維持機構を明らかとし、慢性炎症性皮膚疾患の再発機構の解明および画期的治療薬開発の基盤形成を目的とする。
皆川 茜(信州大学 助教) 250万円
早期爪部メラノーマ診断における爪片中メラニン代謝物質のバイオマーカー検証
爪甲色素線条の多くは色素細胞母斑(ほくろ)などの良性疾患によるものだが、稀に爪部メラノーマ(悪性黒色腫)のことがある。これらを視診のみで確実に鑑別することは、皮膚科専門医であっても容易でない。しかし、確定診断のための病理検査は侵襲性が高く、検査を躊躇しているあいだに早期メラノーマの診断機会を逸することがある。そのため、病理検査を行うべき爪甲色素線条症例を、適切かつ効率的にピックアップするための、非侵襲的検査法の確立が望まれている。私は、非侵襲的に採取した爪片中のメラニン関連物質を測定し、爪部メラノーマのバイオマーカーとする新規方法を考案した。本研究では、複数の医療機関から前向きに症例を集積し、設定済みのカットオフ値を用いて爪片中メラニン関連物質の診断バイオマーカーとしての実用性を検証する。
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