第4回受賞者

*先生のご所属は、ご応募当時となります。

氏名・所属/研究題名/研究概要 助成金額
乃村 俊史(北海道大学大学院 講師) 500万円
長島型掌蹠角化症に対する新規治療法の開発と変異SERPINB7 mRNA分解機構の解明
長島型掌蹠角化症は、SERPINB7の機能喪失変異により発症する常染色体劣性遺伝性疾患である。興味深いことに、患者の90%以上はナンセンス変異c.796C>T(p.Arg266Ter)を持つ。申請者は先行研究において、ゲンタマイシン硫酸塩がこの変異を読み飛ばし(readthrough、リードスルー)、完全長のSERPINB7産生を促すことを報告したが、臨床試験での薬効は限定的であった。
これは、ゲンタマイシン硫酸塩のリードスルー効果が弱いことと、リードスルーの材料となる変異SERPINB7mRNAが分解により減少していることに起因する。そこで本研究では、長島型掌蹠角化症に対するリードスルー治療をより具現化するために、①さらにリードスルー活性の高い化合物を同定すること、②この変異を持つSERPINB7mRNAの分解機構を決定し同mRNAを増加させる方法を確立すること、の2点を目指す。
山中 恵一(三重大学大学院 教授) 500万円
重症皮膚炎に随伴する内臓臓器障害の病態解明と治療法の検討
尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎等の慢性皮膚疾患では皮膚局所から産生されるサイトカインが局所の炎症の憎悪と遷延化に関与するのみならず、内臓臓器に甚大な影響を及ぼす。我々は自然発症皮膚炎モデルマウスを用いて、皮膚炎症病巣部から産生される炎症性サイトカインにより内臓臓器に影響をもたらす可能性や(PLoS One,2014)、心脳血管病変にも関与することを証明し、”Inflammatory Skin March”という新規の概念を提唱した。(JACI,2015)。更にはPET解析を行い持続的な皮膚炎症が脳機能の低下にまで至る可能性があるという報告も行った(JID,2018)。本研究では慢性皮膚疾患に続発するとされる動脈硬化症を媒介する蛋白や主因となる炎症性サイトカインの同定や、炎症に随伴する骨粗しょう症の成因、消化管アミロイドーシスの病態を解明すると共に、乾癬性関節炎の成因についても迫る。
渡辺 玲(筑波大学 講師) 500万円
皮膚T細胞の脂肪酸代謝に着目した皮膚免疫老化予防策の開発
本研究は、脂肪酸が皮膚T細胞に及ぼす影響に着目し、高齢者における皮膚免疫低下の予防策を考案することを目的とする。ヒト皮膚には長期間皮膚に定着するresident memory T 細胞(TRM)が存在し、循環中と異なる固有のT細胞叢が作られる。高齢者皮膚T細胞は、細胞のレベルでは血中と異なり高い抗原応答能を維持している一方、皮膚、肺を始めバリア組織をエントリーとする全身性感染症は高齢者で多く、T細胞の機能発揮を妨げるような微小環境が高齢者皮膚に構築されることが想定される。TRMは脂肪酸代謝を積極的に行うことで末梢組織での長期生存を可能とし、またT細胞の免疫応答能が脂肪酸に影響を受けることから、皮膚脂肪酸組成の観点から、皮膚T細胞が効率的に免疫応答を発揮できる環境を見出したい。
成果を高齢者における有効な疾患予防策につなげ、さらに、皮膚の知見を他臓器に応用することを見込みたい。
武市 拓也(名古屋大学 講師) 250万円
自己炎症性角化症の病態解明と治療法の確立
自己炎症性発症機序を有する一連の炎症性角化症を包括する概念が、「自己炎症性角化症 (autoinflammatory keratinization diseases: AiKD)」である。AiKDとして、CARD14遺伝子の機能獲得バリアントやIL36RN遺伝子の機能喪失変異を発症因子として有する汎発性膿疱性乾癬をはじめとした乾癬とその類症、CARD14遺伝子の機能獲得変異による毛孔性紅色粃糠疹V型、NLRP1遺伝子変異を病因とするfamilial keratosis lichenoides chronica、γセクレターゼ遺伝子変異を原因遺伝子とする化膿性汗腺炎等が認知されている。
AiKDの患者は、生涯に渡って、皮疹や掻痒、掌蹠の亀裂による疼痛に悩まされるが、未だに有効な治療法は確立されていない。本研究ではAiKDの包括的病態解明を目指し、さらに新規オーダーメイド治療に直結する基礎的データを得ることを目的とする。
森実 真(岡山大学大学院 教授) 250万円
メラノーマに対するがん神経医療の開発
メラノーマは色素細胞(メラノサイト)の癌化により生じる、非常に予後の悪い疾患である。
近年、進行期メラノーマの治療は免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体や、分子標的薬のBRAF・MEK阻害剤による個別化医療が展開されているが、より安全に、効果的に、適正使用してゆくための課題がまだ多数存在する。2015年に岡山大学病院は全国初のメラノーマセンターを開設した。開設後、新患患者数、入院患者数、手術患者数は徐々に増加している。一方、岡山大学細胞生理学分野研究チームは神経がヒト乳がん組織に入り込み、生命予後を憎悪させ得ることを示すと共に、ウィルスベクターをがん組織に局所注射し、がん組織に分布する局所神経の機能を操作(刺激・除去等)する技術(局所神経エンジニアリング、特許)を開発し、実際に動物モデルで乳がんの進展や転移を抑制した(Nat Neurosci. 2019;22(8):1289-1305)。そこで本研究ではメラノーマを対象に、がん組織に分布する神経を操作してがんを抑制するがん神経医療の基礎技術を開発する。  
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