第7回受賞者

高木賞

*先生のご所属は、ご応募当時となります。

氏名・所属/研究題名/研究概要 助成金額
濱 菜摘(新潟大学 講師) 500万円
新規重症度予測スコアCRISTENに基づくStevens-Johnson症候群および中毒性表皮壊死症の重症度予測バイオマーカーの探索
重症薬疹であるStevens-Johnson症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、失明などの後遺症を残しうるだけではなく、生命予後的にも特にTENにおいて死亡率が29.9%と予後不良の医原性疾患である。有効な早期診断や治療法の確立が重要かつ急務であり、我々はこれまでにgalectin-7やRIP3が早期診断のバイオマーカーになりうることを見出してきた。一方、治療方針決定のために必要な重症度予測バイオマーカーについては国際的にもほとんど報告がない。我々はSJS/TEN全国調査のデータから10種類のリスク因子である臨床データに基づいた新規重症度予測スコア(CRISTEN)(論文投稿中)を作成した。本研究ではさらに致死的合併症のリスク因子の探索および、重症度予測バイオマーカーを網羅的な探索を目的とする。重症度予測バイオマーカーが判明すれば発症初期における適切な治療選択が可能となり、STS/TENの予後改善に寄与すると考える。
柳 輝希(北海道大学 講師) 500万円
乳房外Paget病における薬剤耐性機構の解明と新規治療法開発
乳房外パジェット病は高齢者の外陰部に好発する皮膚悪性腫瘍であり、進行例では化学療法に抵抗性で予後不良である。進行期乳房外パジェット病に対しては、他の腺癌に倣ってドセタキセルやシスプラチンなどが使用されているが、確立された治療法はなく保険承認薬も存在しない。申請者らの北海道大学皮膚科の研究グループは、乳房外パジェット病リンパ節転移組織を免疫不全マウスに移植することにより、新しい乳房外パジェット病前臨床モデルを作製した(異種移植モデル:Oncogene 2020)。本研究ではこの前臨床モデルを活用して、①薬剤耐性モデルの作製、②薬剤耐性機構の解明、③薬剤耐性腫瘍に対する新規治療法探索、の3点を実施する。さらに④臨床情報・腫瘍検体を用いて薬剤奏効解析と腫瘍検体の特性解析をおこなう。これらによって乳房外パジェット病に対する新規治療薬の開発と腫瘍特性による薬剤選択の可能性を探る。
江川 形平(京都大学 講師) 250万円
T細胞を抗原特異的に皮膚へ遊走させるメカニズムの解明
タンパク抗原を用いた皮膚炎モデルにおいて、「樹状細胞が血管周囲にトラム状に配列する」という独自に観察した免疫現象から、抗原特異的なT細胞が皮膚へと選択的に遊走するための仕組みが存在するのではないかとの仮説を得た。本研究はこの新規免疫現象を足掛かりとして本仮説を検証する。具体的には、①本現象が生じる条件、②関与する細胞サブセット、③現象の形成に必要なサイトカイン群を同定する。また④本現象の形成を阻害することで、抗原特異的T細胞の皮膚への浸潤効率や炎症の度合いに影響が生じるかを検証する。本研究により、抗原特異的な皮膚免疫応答を増強するための新規メカニズムが明らかとなれば、これを標的とする新しい治療薬の提供につながる可能性が期待される。
沖山 奈緒子(東京医科歯科大学 教授) 250万円
皮膚筋炎特異的自己抗体別サブグループごとの治療標的探索
炎症性筋疾患の一つである皮膚筋炎は、全身性自己免疫疾患であり、症状も多彩な「症候群」である。治療は非特異的免疫抑制療法を組み合わせて行っているが、病態の基礎的裏付けには乏しい。近年同定された複数の筋炎特異的自己抗体ごとに、特徴的臨床像があることが分かってきた。申請者は、抗TIF1γ抗体陽性例を模した、TIF1γに対する自己免疫反応を基盤とした筋炎モデルマウスを世界に先駆けて確立している(Okiyama N*, et al., Ann Rheum Dis. 2021)。さらに、抗MDA5抗体陽性例の急速進行性間質性肺炎を模した間質性肺炎モデルマウスや、抗Mi2β抗体や抗NXP2抗体陽性例を模した重篤な筋炎モデルマウスなどを開発中である。本研究では、これらのモデルマウスの解析から抗体サブグループごとに特異的な治療標的を同定し、前臨床試験を行って、臨床試験へ進む基礎的データとする。
柴田 彩(東京大学 准教授) 250万円
高脂肪食摂取による皮膚免疫細胞の形質変容ならびに乾癬における新しい予防戦略の開発
日本における乾癬患者数は増加傾向にあり、その背景には食生活の欧米化が関係していると言われている。肥満を併せもつ乾癬患者は乾癬の治療に対する反応性が低く、乾癬は全身性の炎症性疾患として、皮膚のみならず、全身を治療することが求められている。近年、食生活といった持続する環境要因が細胞の形質変容を引き起こし、炎症反応を増強し、病気の慢性化や治療抵抗性に関わることが注目されている。高脂肪食の摂取は、皮膚への免疫細胞の浸潤を増強させ、皮膚炎を悪化させることはすでに知られている。本研究では、持続的な高脂肪食の摂取が免疫細胞の形質変容を引き起こすかに着目し、形質変容をきたした免疫細胞が皮膚炎の増強や皮膚組織における細胞の定着に寄与しているかどうかを検証する。高脂肪食摂取によって誘導される「炎症を起こしやすい」細胞の仕組みを明らかにするという新しい視点から、乾癬の予防・治療戦略に取り組むことを目的とする。
中村 善雄(慶應義塾大学 専任講師) 250万円
アンドロゲン受容体陽性乳房外パジェット病オルガノイドを用いた腫瘍増殖に関わるアンドロゲンシグナル伝達経路の生物学的解析
乳房外バジェット病(EMPD)は高齢者の外陰部等に発生する上皮系皮膚悪性腫瘍であるが、進行期の薬物治療は確立されておらず、保険適応のある薬剤はない。実診療で試みられているタキサン系をはじめとした殺細胞性抗がん剤も奏効期間は平均数ヶ月程度と報告されており、十分な有効性が得られていると言い難い。我々の先行研究ではEMPDの9割以上の症例にアンドロゲン受容体(Androgen Receptor、以下AR)発現がみられており、過去にも実臨床における抗アンドロゲン療法の有効例の症例報告や、AR発現およびアンドロゲン産生酵素と疾患進行の関与に関する報告もみられる。現在我々は、進行期EMPDに対する抗アンドロゲン療法の開発を目指しているが、本研究ではAR陽性EMPDに対する抗アンドロゲン療法の科学的根拠を確立することを目的として、AR陽性EMPDオルガノイドを用いてアンドロゲンシグナル伝達経路の生物学的解析を行う。

高木賞臨床研究奨励賞

*先生のご所属は、ご応募当時となります。

氏名・所属/研究題名/研究概要 助成金額
影山 玲子(浜松医科大学 助教) 50万円
免疫組織学的解析を通した特発性後天性全身性無汗症の病型分類の試みと新規病態機序の解明
特発性後天性全身性無汗症(AIGA)は、全身の発汗障害を主症状とする原因不明の難病指定疾患であり、患者QOLに深刻な影響が生じる。従ってその病態解明と治療法開発は極めて重要な課題である。しかし、AIGAがそもそも単一病態の疾患なのかどうか、AIGAの病型分類の可能性について系統的な検証はされていない。実際、治療反応性や病変部の組織学的変化には多様性が存在する。課題解決を目指す上で、AIGAの臨床病型の正確な把握は重要な基盤となる。本研究では、自施設で蓄積した豊富なAIGA症例を活用し、臨床経過・治療反応性・病理組織学的変化・従来の病態仮説の系統的検証を行い、AIGAの病型分類の可能性について検証する。病型分類が明らかとなれば、治療の最適化につながる可能性があり、臨床的意義は大きい。将来的には病型ごとの詳細な分子生物学的解析・網羅的解析を行い、病態形成に本質的に重要な分子の同定を目指す。
末木 博彦(昭和大学 名誉教授) 50万円
外耳道皮膚炎に関する皮膚科・耳鼻咽喉科による共同疫学研究
外耳道皮膚炎は皮膚科と耳鼻咽喉科の境界領域であり、その疫学や病態について科学的エビデンスが不十分なままそれぞれの視点から経験に基づく診療が行われているのが現状である。本研究の目標とするアウトカムは1)本疾患診療の現状を両診療科で共同調査し、科学的エビデンスに基づく病態分類別の診断・治療指針の平準化、診療の質向上を図ること、2)分析疫学的手法を用いて病態分類別に発症、増悪因子を明らかにし、予防のための生活指導に役立てることである。耳鼻咽喉科補聴器外来を受診する患者70名を対象とし、皮膚科医が外耳道を中心とする皮膚病変の有無、皮膚所見を診察し、病態別分類を行う。発症、増悪因子として疑われる項目の該当状況を調査する。一方、皮膚科外来を受診する顔面・頭部に皮膚炎を有するアトピー性皮膚炎患者50名、脂漏性皮膚炎患者50名について外耳道皮膚炎の有無、疫学事項に加え、発症、増悪因子についても解析する。
棚橋 華奈(名古屋大学 助教) 50万円
LIPH遺伝子変異による常染色体劣性縮毛症・乏毛症の臨床像と病態の解明
常染色体劣性縮毛症・乏毛症(autosomal recessive woolly hair/hypotrichosis:ARWH)は生後間もない頃より、短く細く縮れた毛髪と乏毛を認める疾患であり、確立された治療法はない。申請者らは日本人におけるARWHの90%以上がLIPHの特定の変異を持つこと、その変異の保因者率は日本人の約2%にも及ぶことを明らかにし、さらにARWH患者に対するミノキシジル外用の有効性を報告した。本研究では、同じLIPH変異を持つARWH患者の中でも乏毛の重症度に違いがあること、頭髪以外の臨床像は未だ明らかになっていないことに着目し、(1)ARWHの乏毛の重症度に関与するLIPH以外の遺伝子を同定すること、さらに(2)ARWH患者の頭髪以外の皮膚および皮膚付属器変化を明らかにすることで、ARWHの病態解明と治療法開発に直結するデータを得ることを目的とする。
宮田 聡子(さいたま市民医療センター 皮膚科科長) 50万円
糖尿病足病変はいかにして形成されるのか?
-フットプリントを用いた足の形態学的変化の疫学調査-
糖尿病足病変は、糖尿病性神経障害を基盤として生じる足部の構造的もしくは機能的な変化に、様々な程度の循環障害が合併することで形成される病態とされ、患者の活動性低下に繋がる原因の一つである。皮膚科では、鶏眼、胼胝、皮膚潰瘍、壊疸などの糖尿病足病変を診療する機会が多いが、多数の症例で足部の変形や萎縮などを合併しているため難治である。糖尿病の足部は、足部内在筋の筋萎縮による凹足、Charcot foot呼ばれる骨や関節の破壊が起きると足底弓が低下すると言われているが、実際の臨床ではそれ以外にも様々な症状や病態に遭遇する。本研究では、健康なヒト、糖尿病患者、糖尿病足病変と診断された患者の三群について、診療で得られた各パラメーターを比較検討し、糖尿病患者の足部がどのような形態学的・機能的変化をきたすのか、そのプロセスを解明することにより、健康寿命の延長に貢献したいと考えた。
山﨑 文和(関西医科大学 准教授) 50万円
冠動脈心臓CT(CCTA)を施行した88名の乾癬患者における最大6年間の追跡調査による死亡症例と生存症例における背景因子・サイトケインプロファイルの検討
乾癬は全身性炎症性疾患であり、欧米では健常人より生命予後が短くなると考えられ、その死因の最多は心血管障害である。我々の施設では88名の全身治療前の乾癬患者にて冠動脈および心臓のコンピュータ断層撮影(CCTA)を施行し、日本人乾癬患者にて健常人と比して心血管病変を有している率が高いことを確認した。検証を行った乾癬患者88名にて最大6年間追跡調査を行い、死亡症例と生存症例の背景因子(年齢・性別・乾癬の病型・喫煙の有無・拡張期血圧/収縮期血圧・耐糖能異常の有無・LDLコレステロール/HDLコレステロール値・早発冠動脈疾患家族歴・並存疾患の有無・生存疾患の治療薬・乾癬の重症度:PASIスコア・BMI・乾癬の家族歴)の違いや、介入した治療法によるリスクの変動を検討する。また、CCTAを複数回施行した症例に関しては心血管の形態変化やサイトカインプロファイル(TNF-α、IL-17、IL-23、INF-γ、IL-1β、IL-6)を測定し、治療介入による変化の有無を調査する。
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