第9回受賞者
高木賞
*先生のご所属は、ご応募当時となります。
氏名・所属/研究題名/研究概要 | 助成金額 |
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中溝 聡(京都大学 特定准教授) | 500万円 |
血管内皮細胞による免疫記憶機構の解明 | |
皮膚は、体の最外層の組織であるため絶えず外来抗原と接触している。申請者は、皮膚に抗原が侵入し皮膚炎を起こすメカニズムを研究しており、抗原の侵入により皮膚の血管周囲マクロファージが活性化し、樹状細胞とT細胞を血管周囲に集め、T細胞を活性化させることを発見した。さらに、皮膚に炎症が起こると血管の形状が変化し細胞の組織への移行を促進する高内皮細静脈に変化すること、急性炎症時の高内皮細静脈の形成阻害は炎症収束後に再び炎症を起こしたときの炎症を減弱させることを見出した。これらの結果により、免疫記憶はT細胞が皮膚に入るための入口である血管と血管周囲の組織によっても担われているという仮説をたてた。本研究では、アトピー性皮膚炎における経時的な1細胞レベルの遺伝子と転写因子の結合を評価することにより、血管と血管周囲組織による免疫記憶機構の解明を行う。 | |
福田 桂太郎(理化学研究所 上級研究員) | 500万円 |
先天性魚鱗癬の角層pH制御異常機構の解明と治療開発 | |
皮膚最外層の角層は、死んだ角化細胞が堆積してできた層だが、恒常性維持機構が存在し、皮膚バリアとして機能すると共に、落屑により自身の厚みを一定に保つ。申請者は、角層pHを可視化したマウス(角層pHマウス)を作製し、角層pH解析を行った結果、角化細胞は死後もなお分化して、弱酸性(下層)-酸性(中層)-中性(上層)の角層pH三層構造を形成し、角層恒常性を維持することを明らかにした。先天性魚鱗癬は、角層の分化、落屑機構が障害される遺伝性皮膚疾患で、過角化、dysbiosis、ドライスキン、紅皮症が生じ、角層pH制御異常が示唆される。有効な治療法は殆どない。そこで、本研究では、先天性魚鱗癬角層pHマウスを作製し、角層pH解析、角層脂質解析、角層プロテオーム解析、角層水分子性状解析を行い、先天性魚鱗癬の角層pH制御異常機構を明らかにする。そして、角層pH制御異常を標的とした新規治療法の効果を検証する。 | |
岡村 賢(山形大学 助教) | 250万円 |
空間トランスクリプトーム解析を用いた白斑の病態の包括的理解 | |
白斑は、皮膚のメラノサイト特異的自己免疫疾患であり、患者のQOLを著しく低下させる一方、未だに有効な治療法が確立していない。近年、飛躍的にその病態解明が進んできたが、その空間(位置)・時間的情報の欠如により、白斑発症に関わるシグナル伝達がどの時期に、どこで起こっているのか、その詳細は不明である。また、現在JAK阻害薬などの新規治療が白斑にも応用されようとしているが、その具体的な作用機序は不明である。最近我々は、白斑患者とその病態が酷似したヘアレスモデルマウスを確立した。本研究は、このモデルマウスおよび患者由来サンプルを用いて、白斑発症前後、治療前後における罹患皮膚の空間トランスクリプトーム解析を行う。本研究により、白斑の発症機序、および各種治療の効果・作用機序を明らかにし、新たな治療/予防ターゲットを特定することを目的とする。 | |
梶原 一亨(熊本大学 特任准教授) | 250万円 |
臨床実装を目指した皮膚がんにおけるliquid biopsyの包括的探索 | |
liquid biopsyは、液性検体を採取し循環腫瘍細胞・DNA・exosome・microRNA・RNAを解析することであり、腫瘍全体の包括的な遺伝子異常を俯瞰できる。皮膚がんにおける早期診断・切除後微小残存病変検出・適切な治療選択・治療効果の早期判定・耐性獲得モニタリング・予後予測を目的としたliquid biopsyの臨床的有用性が明らかにされれば、皮膚がん診療の革新的イノベーションが実現可能となる。本研究では、circulating tumor DNA・exosomal mRNAを試料とし、NGSやddPCRを用いて臨床応用可能な候補遺伝子を探索し、前述の臨床所見項目との関連性を検討する。皮膚がん診療において、真にdecision makingになり得るliquid biopsyの臨床実装実現を目指す。 | |
住田 隼一(東京大学 准教授) | 250万円 |
リゾリン脂質の皮膚疾患における多彩な機能解明 | |
生体膜構成脂質の一種であるグリセロリン脂質がホスホリパーゼA₂等の酵素により分解されて生じるリゾリン脂質や遊離脂肪酸は、メディエーターとして様々な作用がある。申請者はこれまでに、炎症性疾患(乾癬等)や線維性疾患(全身性強皮症等)をテーマに、脂質や免疫といった視点から基礎・臨床研究に取り組んできた。これまでに、ヒト皮膚疾患臨床検体やマウス疾患モデルなどを用いて、関連する代謝酵素や受容体なども含めたリゾリン脂質に着目した予備実験を行い、既に興味深い結果/シーズを複数得ている。そこで、本研究では、炎症性疾患と線維性疾患それぞれにおいて、注目すべきシーズを研究展開する。本研究期間中では、臨床検体解析や細胞実験に加え、遺伝子改変動物を用いた動物実験なども行い、リゾリン脂質の皮膚疾患における多彩な新規機能の解明を行い、レスキュー実験なども実施することで、将来の臨床応用へ向けた基盤構築までを目指したい。 | |
戸村 八蓉生(帝京大学 助教) | 250万円 |
DNAクロマトグラフィー法を用いた皮膚感染症起因菌multiplex検出法の開発 | |
皮疹の原因は様々でその鑑別は日常診療で最も重要なものの一つであるが、ほとんどは視診に頼っているのが現状であり診断に難渋する例も少なくない。特に感染症は起因菌の同定が治療方針の決定に重要であるが、簡便な診断法があるものは限られている。 申請グループは最近、LAMP法による核酸の等温増幅とDNAクロマトグラフィー法を組み合わせた検査法(CRADAR-i法)を開発した(国際特許出願済)。本法は、試薬類が全て使い捨ての小型キットに内包されている室温保存可能な検査法であり、簡単な操作で1時間程度で複数の核酸の存在を同時に可視化できる。 本研究では、これを応用して、1. 手足口病、伝染性膿痂疹、EBV感染症、丹毒などの日常遭遇する感染症、および、2. 迅速診断が求められる壊死性筋膜炎・劇症型溶連菌感染症などの起因菌を同時検出する方法を確立する。これにより皮膚科の日常診療に変革をもたらすことが期待される。 |
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廣保 翔(大阪公立大学 講師) | 250万円 |
高頻度分裂表皮幹細胞による毛包間色素細胞の局在制御機構の解明 | |
ヒト毛包間表皮の基底層には、角化細胞約10個につき1個の色素細胞が存在する。この毛包間色素細胞は表皮突起に多く局在することから、表皮突起が色素細胞の遊走や維持に関わる可能性が示唆されるが、その機構は不明である。共同研究者の佐田らは、表皮突起に分裂頻度の高い表皮角化幹細胞が分布することを示したが、これらの表皮幹細胞の分布が色素細胞の局在と偶然に一致するのか、あるいは高頻度分裂表皮幹細胞が毛包間色素細胞の局在に関与するのかはわかっていない。申請者は予備実験で、高頻度分裂表皮幹細胞を除去したマウスで、表皮及び毛包内の色素細胞の局在が乱れることを発見した。それを踏まえて我々は、「表皮突起に局在する高頻度分裂表皮幹細胞集団が色素細胞の局在を規定する」と仮説を立てそれを検証する。色素細胞の局在の制御因子を同定することは、白斑などに対する新規治療の開発につながり、臨床的・社会的意義が大きい。 | |
吉原 渚(順天堂大学 准教授) | 250万円 |
円形脱毛症におけるオートファジー機能の解析 | |
オートファジーは細胞内小器官での蛋白処理機構で、白斑や角化性疾患、アトピー性皮膚炎への関与が指摘されている。我々は円形脱毛症モデルマウスおよびオートファジー関連遺伝子欠損マウスの皮膚を観察し、円形脱毛症の病態におけるオートファジー機構の関連の可能性を想起した。本研究では、円形脱毛症におけるオートファジー機能の関与の解明を目的に、円形脱毛症モデルマウスであるCCHCR1欠損マウスに対してオートファジー反応系因子が毛周期に際してどのように変化するか、病変部・非病変部における変化を同定する。本研究で得られた成果により、オートファジー反応系からの円形脱毛症に対する新しい治療法の可能性を模索する。 円形脱毛症は、生涯発症率が1-2%と高く、生命を脅かすことがないものの患者の生活の質に著しい影響を及ぼし、再発を繰り返す慢性疾患である。本研究が円形脱毛症の病態に新たな知見を与え、病態に即した現行の治療法と抜本的に異なる新規治療法、再発予防の開発につながることと期待する。 |
高木賞臨床研究奨励賞
*先生のご所属は、ご応募当時となります。
氏名・所属/研究題名/研究概要 | 助成金額 |
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小倉 康晶(浜松医科大学 助教) | 50万円 |
掌蹠膿疱症におけるT細胞サブセット変化とその治療反応性に関する研究 | |
掌蹠膿疱症(Palmoplantar Pustulosis;PPP)は手掌足底に小水疱や無菌性小膿疱を多発する難治性皮膚疾患である。PPPの病態は不明であるが、皮膚炎症部位は組織学的に汗管を中心とした好中球浸潤が特徴的所見の一つであり、PPPは慢性感染症を起点とした汗管中心の好中球性炎症と考えられてきた。また乾癬と同様Th17細胞の関与が疑われてきた。しかし近年、海外からの報告で、PPP患者末梢血ではTh17細胞だけではなく、Th2細胞の増加が報告された。また抗IL-4受容体抗体が奏功する症例など、複数のT細胞サブセットが病態形成に関与している可能性が注目されている。しかしその生理的意義や日本人PPP患者における変化などは研究が進んでいない。本研究では掌蹠膿疱症の末梢血、組織中のT細胞サブセットを解析し、その重症度や治療反応性との関連を調べ、PPPにおけるT細胞の意義に迫る。 | |
神谷 浩二(自治医科大学 准教授) | 50万円 |
水疱性類天疱瘡の炎症病態におけるIL-20 subfamily発現の検討 | |
水疱性類天疱瘡(BP)は表皮基底膜部のBP180(17型コラーゲン)に対するIgG自己抗体による自己免疫性水疱症である。全身に水疱を生じ、炎症による瘙痒性紅斑を伴う。BPでは水疱形成の病態解明は進んでいるが、炎症誘導の病態解明は遅れている。IL-20 subfamilyは炎症性皮膚疾患のアトピー性皮膚炎や乾癬で高発現し炎症を悪化させる。しかし、自己免疫性水疱症に関する知見はなく、他臓器疾患でも自己抗体との関連は不明である。応募者は、BPの病変部と血中でIL-19が高発現することを初めて明らかにした(未発表)。BPには様々な病型があり、IgE自己抗体を有する症例やDipeptidyl Peptidase-4阻害薬に関連した症例なども知られているが、水疱の重症度と炎症の重症度は必ずしも一致しない。そこで本研究では、BPの病型の違いによるIL-20 subfamily発現度の違い、さらに炎症の重症度や治療反応性との関連を明らかにすることを目的とした。将来的にBPの炎症病態におけるIL-20 subfamilyの役割が明らかとなれば、より選択的かつ効率的な治療法の開発につながる。 | |
木ノ内 基史(旭川赤十字病院 皮膚科部長) | 50万円 |
治療法選択による帯状疱疹関連痛持続期間ならびに帯状疱疹後神経痛発症への影響 -2施設における過去10年の治療経過の解析から- | |
2施設(旭川赤十字病院、旭川市立病院)において、過去10年間(2013年1月から2022年12月まで)に診断、治療を行なった帯状疱疹患者のカルテ記録を用いて解析する。なお、初期冶療の影響を検討するため、皮疹出現後5日以内に受診した患者を対象とする。治療法については次の2点に関して、(1)使用した抗ウイルス剤の投与法(経口または点滴静注薬)、(2)早期の神経痛治療薬の投与(皮疹出現後2週以内)、が帯状疱疹関連痛(ZAP)の持続と帯状疱疹後神経痛(PHN)発症にどの程度関与していたかを、統計的手法(構造方程式モデリングなど)を用いて解析する。痛みの持続、特にPHNの発症には、年齢、皮疹の重症度が関連するため、これらの影響を考慮して検討する。得られた解析結果から、患者のプロフィールに従った適切な治療法選択について考案する。 | |
清水 晶(金沢医科大学 教授) | 50万円 |
難治性足底疣贅に関連するHPVの検出 ~リアルタイムPCR法開発に向けた疫学的探索~ |
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尋常性疣贅は、ヒト乳頭腫ウイルス(Human papillomavirus、HPV)感染により生じる。代表的な皮膚科疾患であり、年間250万人程度受診される。臨床的に点状出血が目安となるが、足底に生じた場合、鶏眼・胼胝との鑑別が重要となる。液体窒素療法を行うが、治癒までに時間がかかり、特に荷重部での治癒判定は難しい。このような診断困難例や治癒判定のために、新たな検査法が求められていた。新型コロナウイルスと同様にリアルタイムPCRでタイピングする方法が迅速で簡便であるが、HPVは200種類以上存在するためターゲットとなるHPVを限定する必要があった。今回の研究では、難治性足底疣贅に関連するHPVタイプを疫学的に明らかにし、将来的に臨床で役立つリアルタイムPCR法の確立を目指す。世界的にも同様の検査は実用化されておらず、新規性が高く臨床的に意義のある検査法となる。 | |
杉山 晃子(福岡病院 医長) | 50万円 |
夜間の痒み、掻破行動(掻き行動)と心理的ストレスおよび心身の発達との関連について: ウエアラブル機器を用いた脳波、心拍変動、掻破行動データの包括的解析プログラムの開発 |
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対象:6歳以上で痒みの訴えや掻破行動が強いアトピー性皮膚炎、蕁麻疹患者。 方法:ウエアラブル機器を用いて脳波、心拍変動、掻破行動データを収集し解析プログラムを開発し夜間就寝時の脳波、心拍変動、掻破行動を測定する。 患者背景、検査結果、アンケート結果を用いて掻破動作に対する身体的・精神的因子、睡眠状況との関連について検討する。加えて薬剤効果についても検討する。 |
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滝 奉樹(名古屋大学 助教) | 50万円 |
皮膚血管肉腫に対するプラズマ活性化乳酸リンゲル液を用いた新規治療戦略 | |
皮膚血管肉腫は、血管またはリンパ管の内皮細胞由来の稀な悪性腫瘍で、悪性度の高いことで有名な悪性黒色腫より治療成績は悪く、さらに標準治療が確立されていない。また、黄色人種の方が白人より予後が悪く、本国が主体的に研究をすすめていく必要がある腫瘍である。これまで、本学で開発された乳酸リンゲル液にプラズマを照射したプラズマ活性化乳酸リンゲル液(PAL:plasma activates lactate in Ringer’s solution)が、種々の悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果を示すことが分かってきた。本研究の目的は、皮膚血管肉腫に対して、PALの抗腫瘍効果の評価を行い、次のヒトヘの臨床試験の先駆けとしてPALの最適な投与方法を模索することを目的とする。すでに、PALの正常ヒト皮膚への塗布に対する安全性に関する臨床試験は完了しており、本研究でPALの有効性および安全性が担保されれば、即座にヒトヘの臨床試験を行うことができ、皮膚血管肉腫に対する画期的な薬剤が開発できる可能性がある研究と言える。 | |
中村 貴之(筑波大学 准教授) | 50万円 |
機械学習を用いた乳房外Paget病における病変範囲予測システムの構築 | |
乳房外Paget病は陰部に好発する、アポクリン腺に分化を示す皮膚悪性腫瘍である。多くの乳房外Paget病の症例では転移を伴わず、原発巣の拡大切除により根治することが可能である。乳房外Paget病は紅斑、びらん、白斑、結節などを混じた病変を形成するが、淡い紅斑や白斑は肉眼的に病変と認識できないことがしばしばある。そのため、病変の拡大切除後に病理学的に切除断端が陽性と判明し、再手術が必要となることが少なくない。一方で、肉眼的病変の境界が不明瞭な場合、正常皮膚を過剰に切除してしまうこともある。したがって、乳房外Paget病の病変を見落とさず、より正確に病変の範囲を捉える新規のシステム構築が必要である。本研究では過去に経験した乳房外Paget病の病変写真と実際の腫瘍細胞の存在範囲から、機械学習を用いて乳房外Paget病の病変範囲予測システムを構築し、術前の臨床医による肉眼的な病変範囲の評価をサポートすることを目的とする。 | |
林 良太(新潟大学 講師) | 50万円 |
薬剤性過敏症症候群における紫斑、顔面浮腫の形成機序の解明 | |
薬剤性過敏症症候群(DIHS)は特定の薬剤を原因とすることが多く、通常の薬疹より遅発性に発症する重症薬疹である。DIHSは顔面の浮腫、下肢の紫斑など特徴的な皮疹を有し、診断の一助となる。一方、DIHSにおいて他の薬疹病型と比し、紫斑、顔面浮腫の頻度が高いことを科学的に示している報告はない。また、DIHSは皮疹のみで確定診断出来ない、現在の診断基準においては初診時には確定診断出来ないという臨床医にとって難解な疾患である。 本研究は、DIHSや多形紅斑などの薬疹の各病型における紫斑、顔面浮腫の頻度を比較し、DIHSにおいてみられる皮疹がDIHSに特徴的であるかどうかを科学的に実証する。また、DIHSで出現する顔面浮腫、紫斑が生じる要因として血管透過性の亢進が考えられ、DIHSにおける血管内皮細胞の役割を検討し、DIHSの発症機序の解明を目指すとともに初期診断マーカー、重症度マーカーを探索する。 |
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宮川 史(奈良県立医科大学 講師) | 50万円 |
薬剤性過敏症症候群と他疾患におけるサイトメガロウイルス感染症のリスク因子の相違の検討 | |
サイトメガロウイルス(CMV)感染症は、ステロイド投与中の免疫抑制患者などが発症しやすく、予後を左右する重篤な合併症である。発症リスクを予測できれば予後の改善につながることが期待できる。我々の先行研究によると、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などを含む全薬疹患者では、ステロイド総量とCMV感染症は相関した。しかし、DIHS患者のみを抽出すると、ステロイド総量とCMV感染症に相関は見られず、CD8T細胞数減少が相関していることを見出した。DIHSではステロイド投与のない患者でもCMV感染症を発症することがあり、疾患自体が免疫抑制状態を起こすと考えられている。したがってDIHSにおけるリスク因子が他疾患と異なる可能性がある。本研究では、DIHS患者と、自己免疫性水疱症、皮膚悪性腫瘍など治療により免疫抑制下にある他の皮膚疾患患者と比較し、CMV感染症のリスク因子に相違があるかを検討することを目的とする。 | |
三輪 祐(昭和大学 助教) | 50万円 |
マイクロバイオームによる免疫関連有害事象の発症リスク評価と予防への取り組み | |
悪性黒色腫に対して免疫チェックポイント阻害薬治療を行う20歳以上の患者40症例を対象とする。免疫チェックポイント阻害薬冶療開始前、開始3か月後もしくは免疫関連有害事象(irAE)発症時に患者の舌表面、糞便、病変部皮膚、上腕二頭筋と三頭筋の筋間部の皮膚表面より検体を採取し、16SrRNA解析の結果を基にUniFrac解析、頻度解析、さらには細菌の分布の相違を、ランダムフォレストなど人工知能を用いて非線型解析を行う。治療開始前とirAE発症時、irAE発症群と非発症群、免疫チェックポイント阻害薬レスポンダーと非レスポンダーにおける高頻度菌叢の比較からirAE発症リスクを予測でき、かつ免疫チェックポイント阻害薬の有効性とは乖離した細菌叢を明らかにする。臨床的にはirAEの発症を抑制するが有効性には影響を及ぼさない細菌叢の移植や便治療による予防医療に繋げていく。 |